近江歴史探訪 [1] 〜栗東の金勝山周辺〜
2010.10.26. 富岡 正美
10月6日、滋賀支部ハイキング同好会で栗東の金勝山(こんぜやま)に登りました。南側の狛坂周辺は私も
何度か歩いていますが、今回は世話役の八島憲治さんの案内で、北側のJRA栗東トレセンの近くから山に
入り、天狗岩に至る初めてのコースを歩きました。花崗岩の山塊が続く山道はかなりきびしい登りでしたが、
女性2名を含む10名の参加者は大きな岩塊の合間から眼下に遠望できる琵琶湖と比叡山のすばらしい風景
を眺め大きな感動を得ることができました。栗東とその周辺の湖南地域は古くから仏教文化が栄えた地で、
当時の都とも関連の深い大寺院や文化財が多く残されています。
今回のハイキングで見聞した二三の文化遺産についてその特徴をご紹介いたします。
1.狛坂磨崖仏(こまさかまがいぶつ)
天狗岩から狛坂を南に下ると、標高500m位の
地点で、林の中の少し開けた場所に出る。そこには、
北面して3体の巨大な仏像が浮彫りされた高さ6m
余りの花崗岩が立っている。中央に阿弥陀如来坐像、
その両脇に菩薩立像が並ぶ三尊像である。近くに狛坂寺
の廃寺跡があることから、磨崖仏は平安時代の作と
する説もあるが、像の作風は、朝鮮半島に多く現存する
磨崖仏に酷似することから、新羅系の渡来人の手に
よって、古い奈良時代に、この地で制作されたものと
みられている。
なお、この磨崖仏は早くから国史跡に指定されている。
随筆家の白洲正子さんは、『近江路散歩』(新潮社 1988)の中で、きびしい山を登ってこの磨崖仏を見たときの印象を
次のように述べている。「聞きしに優る傑作であった。こんなに迫力のある石仏を見たことがない。それに環境がいい。
人里離れたしじま(静寂)の中に、山全体を台座とし、その上にどっしり居坐った感じである」。
確かに見ていて飽きない優れた磨崖仏といえる。
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2.逆さ観音
狛坂から上桐生に向かう道を下り、新名神高速道路の下をくぐった先の右手に「逆さ観音」と呼ばれる大岩がある。
目前に見られる岩の上面に浮き彫りされた磨崖仏は、頭を下にした逆向きの状態になっている。元は上部の山上に
あった岩の一部とのことであるが、明治時代に治水工事としてオランダ堰堤を造る際に石材が必要となり、山上の
磨崖仏のある大岩の一端を切り取って使われた。
そのために岩が不安定となり、その後の地震などで
バランスを失い、山上からずり落ちて磨崖仏が逆さ
の状態になって留まったという大岩である。
地元では、逆さになっても大洪水から守ってくれる
大岩として敬われている。
これは鎌倉時代の初めに作られた磨崖仏の一つで、
阿弥陀三尊の石仏である。今では登山客にもご愛嬌
の石仏として話題にされている。
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3.オランダ堰堤
狛坂から下山し、上桐生のバス停に出るまでのキャンプ場の手前の川で、石積みの堰堤(えんてい) が見られる。
明治初年の淀川大洪水を契機に、政府は上流
での治水事業に力を入れる。技術に乏しい日本の
政府は、オランダ人技師のヨハン・デレーケ氏を雇い、
各地で砂防工事を進める。
上田上桐生町の草津川上流に設けた堰堤も
デレーケの設計で、明治11年の完成である。
設計者の国名をとり「オランダ堰堤」と呼ばれる。
堰堤は30cm×40cm角、長さ1mの石材を積み
重ねて築堤されている。
事務局より
プリントはPDFファイルをお勧めします。
なお、上記文章についてはWORD文書をコピー&貼り付けで作成しましたが、うまくいかず、相当手を掛けています。
PDFファイルのスタイルが原文とご理解ください。